「最低賃金が上がる」というニュースは毎年流れてきます。ただ、自分の家の家計がいくら変わるのかまで書いてある記事は、なかなか見つかりません。
この記事では、年収500万円台・子育て中の40代パパが、2026年10月からの最低賃金でパートの年収がいくら増えるかを、週の勤務時間別に電卓で出します。制度の背景は後回しで、金額から先に出します。
いまの時給が最低賃金ちょうどなら、週20時間のパートで年収は約5万7,200円増えます。ただし、勤務先が50人以下で扶養内(年130万円未満)に収める前提だと、「働ける時間が月4.5時間減る」という逆の話にもなります。
- 2026年度の最低賃金は全国平均で1,176円(+55円・4.9%)の見通し
- 週20時間なら年 +5万7,200円/週25時間なら年 +7万1,500円
- 年収130万円未満を守るなら、働ける時間は年約54時間・月約4.5時間減る(勤務先が50人以下の場合。51人以上で契約が週20時間以上なら、10月から社会保険に入る側になります)
- 上がる日は10月1日とはかぎらない(都道府県ごとに違う)
- 2026年10月からの最低賃金がいくらになるかと、その数字の正しい読み方
- 時給が55円上がるとパート年収がいくら増えるか(週の勤務時間別の早見表)
- 扶養内を守るならシフトを何時間減らすことになるか
- 同じ2026年10月に予定されている「106万円の壁」の撤廃で本当に変わること
- 10月より前に夫婦で確認しておく3つのこと
正直に言うと、最低賃金のニュースは「パートで働いていない自分には関係ない」と思って読み飛ばしていました。扶養の話とつながっていると気づいたのは、電卓を叩いたあとです。
最低賃金は2026年10月からいくらになる?
2026年7月28日、厚生労働省の中央最低賃金審議会が、2026年度(令和8年度)の引き上げの目安をまとめました。金額の目安は、Aランク54円・Bランク56円・Cランク56円です。
この目安どおりに各都道府県で引き上げが行われた場合、全国加重平均は1,176円になります。いまの1,121円から55円、率にして4.9%の引き上げです(前年度は66円・6.3%)。
出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(報道発表資料PDF)
1,176円は「仮に目安どおりに引上げが行われた場合」の全国平均です。
実際の金額は、各地方最低賃金審議会の審議を経て都道府県労働局長が決めます。
目安を上回る答申もすでに複数出ています。たとえば鳥取県は目安の56円を超える60円引き上げて1,090円、秋田県は59円引き上げて1,090円と答申されました。
答申が出そろうのは8月下旬から9月にかけてで、最終的な全国平均は1,176円から上振れする可能性があります。
上がる日は10月1日とはかぎらない
ここが、いちばん誤解されやすいところです。最低賃金は都道府県ごとに発効日が違います。「10月から全国いっせいに上がる」わけではありません。
前年度(令和7年度)の実績を見ると、その差は数か月に及びました。同じ引き上げでも、住んでいる場所によって実際に時給が上がる月が半年近くずれたことになります。
| 都道府県 | 令和7年度の額 | 発効日 |
|---|---|---|
| 栃木 | 1,068円 | 令和7年10月1日 |
| 東京 | 1,226円 | 令和7年10月3日 |
| 大阪 | 1,177円 | 令和7年10月16日 |
| 群馬 | 1,063円 | 令和8年3月1日 |
| 秋田 | 1,031円 | 令和8年3月31日 |
2026年度も同じです。すでに出ている答申を見ると、三重県は10月1日、鳥取県は10月3日、秋田県は10月14日と、発効予定日がばらけています。
なお秋田県は、令和7年度は翌年3月31日発効でしたが、令和8年度は10月14日と大きく前倒しされています。昨年度の一覧はあくまで「これだけ差が出ることがある」という参考として見てください。
出典:厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金 全国一覧(PDF)」/三重労働局の答申/鳥取労働局の答申/秋田労働局の答申
10月1日から全国いっせいに上がるものだと思い込んでいました。前年度の一覧で、いちばん遅い県が翌年3月31日だと知ったときは、正直かなり驚きました。
時給が55円上がるとパート年収はいくら増える?

計算式はとても単純です。増える時給(55円)× 週の勤務時間 × 52週。これだけで、1年でいくら増えるかが出ます。
全国平均の55円で計算すると、こうなりました。シフトを1時間も増やさなくても、これだけ年収が上がります。
| 週の勤務時間 | 年収の増加 | 月あたり |
|---|---|---|
| 週15時間 | +42,900円 | +約3,575円 |
| 週20時間 | +57,200円 | +約4,767円 |
| 週25時間 | +71,500円 | +約5,958円 |
| 週30時間 | +85,800円 | +約7,150円 |
この表は1年まるまる新しい時給で働いた場合の金額です。実際には発効日から先しか上がりません。
昨年度のように発効が翌年3月までずれ込めば、その年度に効くのは1か月ぶんだけになります。また、契約時給がもともと最低賃金より高い場合は、会社が上げてくれるとはかぎりません。
扶養内に収めるなら働く時間はどれだけ減る?
ここからが、この記事のいちばん大事なところです。年収130万円未満を守るという前提で働いている場合、時給が上がると働ける時間のほうが減ります。
配偶者の扶養に入っている人(国民年金の第3号被保険者)は、年収が130万円未満で、かつ配偶者の年収の2分の1未満であることが条件です。この130万円を時給で割ると、働ける上限時間が出ます。
下の表の月92.1時間は、週にすると約21時間です。週20時間を超えています。
そのため勤務先の厚生年金保険の被保険者数が51人以上なら、130万円に届く前に社会保険に入ることになります(月10.8万円ほどになり、いまの月8.8万円の条件も超えているためです)。
2026年10月に賃金要件が撤廃されると、この分かれ目は「勤務先の人数」と「契約上の週20時間かどうか」の2つだけになります。
| あなたの状況 | 2026年10月からどうなる |
|---|---|
| 勤務先が50人以下 | 社会保険には入りません。上限は130万円だけ。下の表のとおり、月4.5時間ほど減らす検討を |
| 51人以上で契約が週20時間以上 | 年収に関係なく社会保険に加入。「130万円を守る」という選択肢自体がなくなります(次の章へ) |
| 51人以上で契約が週20時間未満 | 社会保険には入りません。全国平均の1,176円なら、週20時間ぎりぎりまで働いても年収は約122万円で130万円に届かないので、シフトを減らす必要はありません |
| 時給 | 年130万円までの時間 | 月あたり |
|---|---|---|
| 1,121円(現在) | 約1,159時間 | 約96.6時間 |
| 1,176円(改定後) | 約1,105時間 | 約92.1時間 |
| 差 | 約54時間 減 | 約4.5時間 減 |
月4.5時間というと、1日5時間シフトのほぼ1日ぶんです。時給が上がったぶん、月に1回シフトを削る計算になります。
たとえば通勤手当が月1万円あると、それだけで年12万円ぶんが130万円の枠を使います。時給×時間だけで上限ぎりぎりを狙うと、手当のぶんだけはみ出します。
令和8年4月1日以降に認定を受ける場合、年間収入は労働条件通知書に書かれた時給・労働時間・日数から見込む形になりました。契約書に金額が書かれていない突発的な残業代のような臨時収入は、この見込額には含まれません。
確認のときに臨時収入で結果的に130万円を超えていたとわかっても、その金額が常識的な範囲にとどまるなら、それだけを理由に扶養から外されることはありません。ただし契約そのものを更新・変更したときは、その都度、内容がわかる書類の提出が必要です。
※この見方が使えるのは給与収入だけの人です。副業の事業収入や年金収入があると、従来どおり給与明細や課税証明書で判定されます。
出典:日本年金機構「第3号被保険者」/厚生労働省保険局・年金局「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(第2版)・事務連絡 令和8年3月9日(PDF)」
そもそも扶養の範囲で働くと手取りがどう動くのかは、こちらで年収別に試算しています。
👉 106万円の壁が撤廃!パート妻が損しない年収を手取りで試算
「時間を削って130万円を守る」以外に、あえて超えて社会保険に入るという道もあります。手取りは一度下がりますが、将来の年金は増えます。その損得は下の記事で計算しました。
「106万円の壁が消える」で本当に変わることは?

最低賃金の改定と同じ2026年10月に、もうひとつ動く予定のものがあります。社会保険に入る条件のうち、月額8.8万円以上という賃金要件(いわゆる106万円の壁)の撤廃です。
ただし、日付の扱いには注意が必要です。法律(令和7年法律第74号)では、この撤廃の施行日は「公布から3年以内の政令で定める日」とされていて、法律そのものには日付が書かれていません。
厚生労働省の政令案の資料には、2026年10月1日を施行日とする政令を別途制定することとしていると書かれています。つまり予定であって、正式には政令を待つ形です。
最低賃金で働く人は、すでに条件を満たしている
そして、ここが見出しだけでは伝わらない点です。最低賃金で週20時間働く人は、賃金要件をとっくに超えています。
週20時間は月に換算すると約86.7時間です。月8.8万円をこの時間で割ると、時給は約1,015円。つまり時給が1,016円以上なら、週20時間働いた時点で自動的に8.8万円を超えます。
厚生労働省の資料も、撤廃の理由をまさにこう説明しています。2026年4月以降は全都道府県で最低賃金が1,016円以上になり、労働時間の条件に当てはまれば自動的に賃金の条件にも当てはまるようになった、という趣旨です。
つまり要件が意味を失ったから消す、ということです。
金額ではなく、この2つで決まります。
- 週の所定労働時間が20時間以上か(ここが実質的な分かれ目)
- 勤務先の厚生年金保険の被保険者数が51人以上か(パートを含む全従業員の頭数ではなく、社会保険に入っている人の数で数えます。この企業規模の条件も2027年10月から段階的に撤廃され、36人・21人・11人と広がる予定)
ほかに、2か月を超えて働く見込みがあること・学生でないこと、という条件もあります。
出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」/厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案の概要(PDF)」/厚生労働省年金局「厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案について(概要・PDF)」
「106万円の壁が消える」という見出しを見て、もう金額を気にしなくていいのかと思いかけました。実際に効いていたのは金額ではなく、週20時間のほうでした。
10月より前に夫婦で確認する3ステップ
浮いたぶん・増えたぶんをどこに置くかで、数年後が変わります。固定費の見直しとセットで考えると効きが大きくなります。
まとめ:上がるのは10月でも、決めるのはいま
- 2026年度の最低賃金は、目安どおりなら全国平均1,176円(+55円・4.9%)
- シフトを変えなくても、週20時間なら年 +5万7,200円、週25時間なら年 +7万1,500円
- 勤務先が50人以下で年収130万円未満を守るなら、働ける時間は月約4.5時間減る(手当があればさらに短くなる)
- 「106万円の壁が消える」で実際に効くのは金額ではなく週20時間と、厚生年金の被保険者51人以上
- 発効日は都道府県で違う。まず自分の県の金額と発効日を調べるところから
金額が動くのは10月でも、シフトをどうするかを決めるのはいまです。夫婦で15分だけ話す時間をとる価値はあると思っています。
収入の側を動かしたあとは、出ていく側もあわせて見直すと差が大きくなります。三大変動費のロードマップはこちらです。
👉 子育て支援金で家計はいくら変わる(年収500・700・1000万別)
👉 106万円の壁撤廃でパートの年金は月いくら増える?
👉 年収500万円台パパが3ヶ月育休を取ったら家計はどうなる?
※本記事は2026年8月23日時点の公表資料をもとにしています。金額・発効日は各都道府県労働局の決定により変わります。個別の働き方・保険加入の判断を推奨するものではありません。
執筆:papakakei.com 編集部|年収500万円台・子育て中の40代パパ
