秋になると、保険会社から「生命保険料控除証明書」が届きます。そこに書かれた控除の上限は、最大12万円。
ただ、控除12万円は「税金が12万円安くなる」という意味ではありません。上限まで使っても、税率5〜10%の人なら戻る税金は年1万〜2万円ほどです。年収500万円台・4人家族のモデルケースで、実際にいくら戻るのかを計算しました。
- 控除を上限の12万円まで使っても、税率5%の人に戻るのは所得税6,126円+住民税7,000円=年1万3,126円
- 2026年分は23歳未満の子がいると一般生命保険料の上限が4万円→6万円に。増える減税は、いちばん多い場合(保険料が年12万円以上)でも税率5%で年1,021円
- 死亡保険 年12万円+医療保険 年4.8万円のモデル家庭なら、戻るのは年およそ1万100円
- 「控除額」と「減税額」の違いと、自分の減税額の出し方
- 2026年分から子育て世帯が使える「上限6万円」の特例の対象と注意点
- 年収500万円台・4人家族のモデルで戻る税金はいくらか
- 年末調整の申告書で、どこにチェックを入れればいいか
正直に言うと、私は長いあいだ「控除12万円」を見て、12万円に近い額が戻ってくるものだと思っていました。計算してみたら、桁がひとつ違いました。
生命保険料控除12万円でいくら戻る?「控除額」と「減税額」は別もの
税金は、収入からいろいろな控除を引いた「課税される所得」に税率をかけて計算します。生命保険料控除は、この「引く側」を増やすしくみです。
つまり、減る税金は控除額×自分の税率。控除12万円でも、税率5%なら所得税で減るのは6,000円(復興特別所得税を含めて6,126円)です。
所得税の控除額ごとに、減る税金を並べるとこうなります。
| 所得税の控除額 | 税率5%の人 | 税率10%の人 |
|---|---|---|
| 4万円 | 2,042円 | 4,084円 |
| 6万円 | 3,063円 | 6,126円 |
| 12万円(上限) | 6,126円 | 1万2,252円 |
住民税は所得割が一律10%で、控除の上限は合計7万円です。上限まで使えば、住民税が7,000円下がります。
所得税と合わせても、税率5%の人で年1万3,126円、税率10%の人で年1万9,252円が上限の目安です。
2026年から子育て世帯は上限6万円に|減税はいくら増える?

2026年分(令和8年分)から、23歳未満の扶養親族がいる人は、死亡保険などの「一般生命保険料控除」の上限が4万円から6万円に上がりました。
もともとは令和7年度の税制改正で2026年分だけの措置として決まり、令和8年度の改正で適用期限が1年延長されています(2027年分まで)。
- 2026年分なら平成16年1月2日以後に生まれた扶養親族がいる人
- 16歳未満の子も含みます(扶養控除の対象外でも「扶養親族」には入ります)
- 子の所得が年62万円以下(給与だけなら年収136万円以下)であること。アルバイト収入の多い大学生の子は確認を
- 共働きで子どもがいる場合は、夫婦のどちらも特例を使えます
- 対象は新契約(2012年1月1日以後の契約)の一般生命保険料
一般生命保険料の年額ごとに、所得税の控除額を比べるとこうなります。
| 一般生命保険料(年) | これまでの計算 | 23歳未満の子がいる場合 |
|---|---|---|
| 3万円 | 2万5,000円 | 3万円 |
| 6万円 | 3万5,000円 | 4万5,000円 |
| 8万円 | 4万円 | 5万円 |
| 12万円以上 | 4万円 | 6万円 |
保険料が年12万円以上なら控除は2万円増えます。ただし減税に直すと、税率5%で年1,021円、税率10%で年2,042円です。
- 住民税は対象外。住民税の一般生命保険料控除は2万8,000円のまま
- 合計の上限12万円は据え置き。すでに一般・介護医療・個人年金で12万円に届いている人は、減税額は変わりません
- 自動では適用されない。年末調整の申告書で「年齢23歳未満の扶養親族」を記入する必要があります
「子育て世帯の控除が1.5倍」と聞くと大きく感じますが、財布に効くのは年1,000円ちょっと。ありがたいけれど、これで家計が変わる話ではないな、というのが正直な感想です。
年収500万円台・4人家族だと戻る税金はいくら?モデルケースで試算
まず、自分の税率を確かめます。モデルは年収500万円・妻を扶養・小学生の子2人です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年収 | 500万円 |
| 給与所得控除を引いた所得 | 356万円 |
| 社会保険料(年収の約15%) | ▲約75万円 |
| 基礎控除(2026年分) | ▲104万円 |
| 配偶者控除 | ▲38万円 |
| 課税される所得 | 約139万円 |
課税される所得が195万円未満なので、所得税率は5%です。共働きで配偶者控除がない場合も約177万円で、同じく5%になります。
ただし共働きで年収540万円あたりを超えると、税率10%にかかる場合があります(その場合、下と同じ保険料なら戻る税金は約1万4,800円)。
次に、支払っている保険料です。ここでは死亡保険 月1万円(年12万円)と医療保険 月4,000円(年4万8,000円)、どちらも新契約として計算します。
| 項目 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 一般生命保険料 年12万円 | 控除6万円 | 控除2万8,000円 |
| 介護医療保険料 年4.8万円 | 控除3万2,000円 | 控除2万6,000円 |
| 控除の合計 | 9万2,000円 | 5万4,000円 |
| 減る税金 | 約4,700円 | 5,400円 |
保険料を年16万8,000円払って、戻る税金は年およそ1万100円。
特例がなかった場合(所得税の控除7万2,000円)と比べて増えたのは、所得税の約1,000円だけです。
所得税の分は年末調整で12月か1月の給与で戻り、住民税の分は2027年6月からの住民税が下がる形で効いてきます。
2026年は基礎控除が大きく増えたので、年収500万円台だと税率5%の家庭が多くなりそうです。「税率10%のつもりで計算していた」という人は、一度確かめておくとズレに気づけます。
生命保険料控除証明書のどこを見る?年末調整で書く手順

証明書が届いたら、見るのは3か所だけです。
- 新・旧のどちらか:2012年1月1日以後の契約なら「新」。旧契約は計算式と上限が違います
- 区分:一般・介護医療・個人年金のどれに入るか
- 申告額:12月までの見込みの支払額。配当金(剰余金)を受け取った場合は差し引いた後の金額です
年末調整に間に合わなかった場合も、確定申告で生命保険料控除を受けられます。
控除を増やすために保険に入るのは損?減税額で考える
「上限が6万円に上がったなら、保険を増やしたほうが得?」と考える方もいるかもしれません。モデル家庭で確かめてみます。
一般生命保険料を年6万円から年12万円に増やすと、所得税の控除は4万5,000円→6万円で1万5,000円増えます。住民税はどちらも上限の2万8,000円で変わりません。
つまり、保険料を年6万円増やして、減る税金は約766円です。
保険料が家計に重いと感じるなら、控除より先に固定費全体の見直しから手を付けたほうが、動く金額は大きくなります。
「控除があるから保険はお得」という言い方をよく聞きますが、数字にすると印象がまったく変わりますね。証明書は、今の契約が本当に必要かを見直すきっかけに使うことにします。
まとめ:控除額に税率をかけて、戻る金額で判断する
- 減る税金は「控除額×税率」。控除12万円でも、税率5%なら所得税6,126円+住民税7,000円が上限
- 2026年分・2027年分は、23歳未満の子がいると一般生命保険料控除の上限が6万円(所得税のみ)
- 16歳未満の子も対象。共働きなら夫婦それぞれ使える
- 年収500万円・妻を扶養・子2人のモデルで戻るのは年およそ1万100円(共働きで税率10%になる人は約1万4,800円)
- 年末調整の申告書で「23歳未満の扶養親族」を書き忘れない
証明書の金額を見て「思ったより少ない」と感じたら、それが正しい感覚です。控除は取りこぼさずに受けて、保険そのものは必要な保障で選ぶ。この2つを分けて考えるだけで、判断はぐっとラクになります。
出典:国税庁 No.1140 生命保険料控除/国税庁 令和8年分 年末調整のしかた/国税庁 令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書/国税庁 No.1199 基礎控除/国税庁 No.2260 所得税の税率/財務省 令和7年度税制改正の大綱/財務省 令和8年度税制改正の大綱/東大阪市 生命保険料控除制度(住民税の計算式)
※2026年9月時点の制度に基づく概算です。社会保険料・住民税は簡略化して計算しており、実際の税額は勤務先の年末調整・お住まいの自治体の計算で決まります。特定の保険商品の加入・解約を推奨するものではありません。
執筆:papakakei.com 編集部
