「今年は少し給料が上がったのに、なんだか手元に残る額が変わらない」。秋になると、そう感じる人が増えます。
理由のひとつが定時決定です。4月・5月・6月の給料をもとに社会保険料の計算のベースが決め直され、9月分の保険料から新しい金額になります。翌月控除の会社なら、変化が見えるのは10月の給与明細です。
この記事では、年収500万円台・40代のモデルケースで、等級が1つ上がると毎月いくら引かれるようになるのかを実額で出します。
標準報酬月額が1等級(2万円)上がると、40代の会社員は毎月3,000円ぶん多く引かれます。1年(12か月)で36,000円です。
- 1等級アップ(32万円→34万円)=月3,000円/年36,000円
- 2等級アップ(32万円→36万円)=月6,000円/年72,000円
- 変わるのは9月分の保険料から。翌月控除の会社なら10月に支払われる給与から
※協会けんぽ東京支部・令和8年度の料率、40歳から64歳(介護保険第2号被保険者)で計算。
- 4月〜6月の給料が、なぜ秋の天引き額を決めるのか
- 等級が1つ・2つ・3つ上がったとき、毎月と1年でいくら増えるか(早見表つき)
- 4月〜6月の残業を減らす作戦は、本当に得なのか(将来の年金まで含めた計算)
- 10月の給与明細で自分の増減を確かめる3ステップ
正直に言うと、私は毎年10月の明細をちゃんと見比べたことがありませんでした。差額が出ていても、たぶん気づかないまま過ぎていたと思います。
なぜ10月の給与から社会保険料が変わるの?
健康保険料と厚生年金保険料は、毎月の給料そのものにかけて計算するわけではありません。給料をいくつかの幅に区切った標準報酬月額という金額に、決まった率をかけて出します。
この標準報酬月額は、年に1回まとめて決め直されます。日本年金機構はこう説明しています。4月・5月・6月の3か月の報酬をもとに、毎年1回決め直すという仕組みです。
事業主は、7月1日現在で使用している全被保険者の3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を算定基礎届により届出し、厚生労働大臣はこの届出内容に基づき、毎年1回標準報酬月額を決定し直します。これを定時決定といいます。決定し直された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
ポイントは最後の一文です。新しい金額が使われるのは9月分の保険料から。会社は7月10日までに届け出を済ませていて、そこで決まった等級が秋から効いてきます。
その月の保険料をその月の給与から引く「当月控除」で運用している会社もあります。その場合は9月に支払われる給与から変わります。どちらの方式かは給与明細か就業規則で確認できます。ここを取り違えると、明細を見比べる月がまるごとズレます。
そしてもう1つ大事なことがあります。定時決定は上がるとはかぎりません。4月〜6月の報酬が前の年より下がっていれば等級も下がり、天引きは減ります。増える人と減る人が、同じ秋に分かれます。

等級が1つ上がると天引きは月いくら増える?【早見表】
ここからが本題です。モデルケースは年収500万円台・40代の会社員(月給32万円前後に賞与4か月分で、年収510万円ほどのイメージ)。協会けんぽ東京支部の令和8年度の料率を使い、標準報酬月額が32万円だった人が上がった場合で計算します。
使う率は次の4つです。健康保険9.85%、介護保険1.62%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%。これらはすべて会社と半分ずつ負担するので、本人が払うのは半額です。
足して2で割ると、40歳から64歳の人の自己負担はちょうど15.0%。標準報酬月額が32万円なら月48,000円、34万円なら月51,000円が引かれる計算です。
| 標準報酬月額の動き | 毎月の天引きが増える額 | 1年分(12か月) |
|---|---|---|
| 32万円 → 34万円(1等級) | 3,000円 | 36,000円 |
| 32万円 → 36万円(2等級) | 6,000円 | 72,000円 |
| 32万円 → 38万円(3等級) | 9,000円 | 108,000円 |
1等級ぶんの内訳はこうです。健康保険と介護保険で1,147円、子ども・子育て支援金で23円、厚生年金で1,830円。合わせて3,000円です。
健康保険料率は都道府県ごとに違います。東京都は令和7年度の9.91%から令和8年度は9.85%へ下がりました。お住まいの都道府県では率が違うので、金額もその分ずれます。勤務先が健康保険組合や共済組合なら、料率も等級の区切りも別です。
また、この表は健康保険・介護保険・子ども・子育て支援金・厚生年金の4つだけの話です。雇用保険料や、所得税・住民税の変化は含んでいません。
同じ「手取りが減る」でも、2026年4月に始まった子ども・子育て支援金は別の話です。こちらは制度が新しくできたぶんの上乗せで、年収別に試算しています。
👉 【2026年4月】年収500万パパの手取りはいくら減る?子ども・子育て支援金を実数で試算
4月〜6月の残業を減らせば手取りは守れる?
この仕組みを知ると、たいてい同じ考えが浮かびます。「じゃあ4月から6月だけ残業を減らせば、1年ぶん得をするのでは」。
たしかに計算のベースには残業代が入ります。日本年金機構は、標準報酬月額の対象になる報酬として早出残業手当・通勤手当・住宅手当・家族手当などを挙げています。税引き前の給料まるごとが対象です。
ただ、制度にそういう枠があることと、その枠に価値があることは別です。残業を減らせば、減るのは保険料だけではありません。残業代そのものも入ってこなくなります。

そしてもう1つ、見落としやすいのが厚生年金です。払った保険料は将来の年金額に反映されます。標準報酬月額が高いほど、老後に受け取る額も増えます。
どのくらい返ってくるのか。日本年金機構の計算式(平成15年4月以降の加入期間は、平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数)に当てはめてみます。
| 標準報酬月額の差 | 20,000円 |
| 20,000円 × 5.481 ÷ 1000 × 12か月 | 1,315円/年 |
| この1年で余分に払う厚生年金保険料(本人分) | 21,960円 |
→ 払った分を年金で取り戻すまで およそ17年。65歳から受け取り始めるなら82歳ごろです。
4月〜6月に無理に残業を減らす作戦は、手取りの前借りに近い動きです。
厚生年金の分だけで見ると「いま余分に払う年21,960円」と「65歳から一生続く年1,315円」のどちらを取るかという話です。本人負担だけで見れば、追いつくのはおよそ17年後。誰にでも当てはまる正解はありません。
計算する前は「4〜6月だけ手を抜けば勝ち」くらいに思っていました。年金まで含めて並べてみたら、そんなに単純な話ではなかったです。
10月の給与明細で自分の増減を確かめる3ステップ
早見表はあくまで目安です。自分の数字は、手元の給与明細2枚を並べるだけで出ます。
ちなみに、この差額は来年8月分の保険料まで続きます。翌月控除の会社なら、最後に差が出るのは来年9月に支払われる給与です。10月に気づいても、まだ11か月ぶん残っているということです。気づくのが早いほど、打ち手を考える時間があります。
基本給や毎月決まって出る手当が上がったり下がったりして、そこから3か月の平均が原則2等級以上ずれると、定時決定を待たずに等級が変わります(随時改定)。この場合は来年8月分の保険料を待たずに天引き額が動きます。
逆に、月によって増えたり減ったりする残業代だけでは、この随時改定のきっかけにはなりません。
まとめ:秋の明細は、1年分の答え合わせ
- 社会保険料のベースは4月〜6月の給料で決まり、9月分の保険料から新しくなる
- 翌月控除の会社なら10月に支払われる給与から変わる(当月控除なら9月)
- 40代なら1等級アップで月3,000円・年36,000円。40歳未満は月2,838円
- 4月〜6月の残業を減らす作戦は、残業代と将来の年金も一緒に減る
- 9月と10月に支払われた給与の明細で保険料の行を比べれば、自分の数字が出る(当月控除なら8月と9月)
制度の名前は難しいですが、やることは明細を2枚並べて保険料の行を見るだけです。増えていたなら、来年8月分の保険料まで続く金額を先に知っておけたということになります。
今年は10月の明細が届いたら、9月の明細と並べて写真を撮っておこうと思います。来年の同じ時期に見返せるように。
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※本記事は制度の解説と試算であり、個別の働き方や保険の判断を推奨するものではありません。実際の金額は勤務先の保険者・都道府県・給与の内訳によって変わります。
執筆:papakakei.com 編集部|年収500万円台・子育て中の40代パパ
