「iDeCoは掛金が全額所得控除」。この一言に惹かれて、妻のぶんも口座を作ろうかと考える家庭は多いと思います。
ところが、扶養内で働いている妻の場合、戻ってくる所得税が1円もないことがあります。この記事は、年収500万円台・子育て中の40代パパが、妻の年収別に「iDeCoで所得税がいくら戻るか」を電卓で出したものです。
扶養内(年収130万円未満)で働く妻がiDeCoに月2万3,000円を入れても、戻る所得税は0円です。もともと所得税を払っていないからです。
- 掛金は年 27万6,000円(月2万3,000円 × 12か月)
- 妻の年収100万円・129万円・160万円・200万円 → 戻る所得税は いずれも0円
- 所得税が戻り始めるのは年収210万円あたりから(年収220万円で年4,500円)、年収300万円で 年1万3,800円
- ただし住民税は別。扶養内でも年収120万円前後を超えると住民税がかかり、その分はiDeCoで減ります(年収129万円で年9,500円前後)
- いっぽう手数料は、国民年金基金連合会の分だけで 年1,260円(+加入時2,829円)
- 扶養内の妻がiDeCoに入ると所得税がいくら戻るのか(妻の年収別の早見表つき)
- なぜ2026年は年収178万円まで所得税がかからないのか、その計算の中身
- iDeCoに入れば「106万円の壁」「130万円の壁」は動くのか
- それでも入る価値があるのはどんな場合かと、NISAとの使い分け
「全額所得控除」と聞くと、入れた分だけ返ってくるように読んでしまっていました。わが家も共働きなので妻のぶんも作ろうかと考えていたのですが、電卓を叩いたら戻る額が0円で止まって、手が止まりました。
扶養内の妻がiDeCoに入ると、所得税はいくら戻る?
答えから言うと 0円 です。掛金をいくら入れても変わりません。
所得控除は「払っている税金を減らす」仕組みです。もともと払っていない人の税金は、それ以上減らせません。扶養内で働いている妻は、この「もともと払っていない人」に当てはまります。
これは制度を運営している側が、はっきり書いています。iDeCoの実施機関である国民年金基金連合会の公式サイトには、注意点として次の2つが並んでいます。
課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません。
iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoの特徴」より
所得控除は、本人の所得からのみ控除されます。配偶者の所得からは控除されません。
後半の一文が、いちばん誤解されているところだと思います。妻の掛金を、夫の所得から引くことはできません。家計はひとつの財布でも、税金の計算は1人ずつ別々に行われるからです。
| 広告でよく見る数字 | 掛金が全額所得控除(年27万6,000円) |
| 妻の課税所得(年収129万円・扶養内) | 0円 |
| 引ける所得がないので、税率をかける前の段階で | 0円 |
→ 戻ってくる所得税は 0円 です。
出典:iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCo(イデコ)の特徴」
なぜ0円になる?2026年は年収178万円まで所得税がかからない
ここは2つの控除を足すだけで確かめられます。給与で働いている人には、次の2つが自動でつきます。
| 控除の名前 | 金額 |
|---|---|
| 給与所得控除(給与収入220万円まで・2026年分と2027年分) | 74万円 |
| 基礎控除(合計所得金額489万円以下・2026年分と2027年分) | 104万円 |
| 合計 | 178万円 |
つまり、給与収入が178万円ちょうどなら、178万円 − 74万円 = 104万円が給与所得。そこから基礎控除104万円を引くと 課税所得は0円 になります。ここまでは所得税がかかりません。
そして扶養内で働くということは、年収130万円未満に収めるということです。130万円は178万円の内側なので、扶養内で働いているかぎり、妻の所得税は最初から0円ということになります。
0円からは、引けません。iDeCoの「全額所得控除」が効くのは、税金を払っている人だけです。扶養内の妻の場合、iDeCoで減る余地が残るのは所得税ではなく住民税のほうです(早見表の下で説明します)。

正直、わたしも「103万円の壁」で頭が止まっていました。数字が変わったことは知っていたのに、自分の計算だけ古いままだったんです。
iDeCoに入れば「106万円の壁」「130万円の壁」は動く?
「掛金のぶん所得が減るなら、その分だけ多く働けるのでは」。そう考えたくなりますが、壁は動きません。社会保険の壁も、税金の壁も、どちらもです。理由が別々なので、順に見ていきます。
① 社会保険の130万円は「賃金」で見るから
日本年金機構は、被扶養者の認定について、令和8年4月1日以降の取り扱いをこう書いています。労働条件通知書などに記載のある賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であれば、原則として被扶養者に該当するものとして扱う、と。
見るのは賃金であって、所得でも課税所得でもありません。しかも同じページの注記に、ここでいう賃金は「労働基準法第11条に規定される賃金をいい、諸手当および賞与も含まれます」とあります。iDeCoの掛金を引く場所は、どこにもありません。
② 106万円の賃金要件は、2026年10月に撤廃される予定
いわゆる106万円の壁は、正確には「所定内賃金が月額8.8万円以上」という加入要件のことです。
この要件について、日本年金機構は「最低賃金以上で週20時間以上働く場合は、所定内賃金が月額8.8万円以上となるため、この要件は令和8年10月に撤廃予定です」と書いています。
撤廃されると、判断のものさしは「週20時間以上働いているか」と「勤め先の規模」に移ります。金額の話ではなくなるので、iDeCoの掛金はますます関係がなくなります。
③ 配偶者控除の判定は「合計所得金額」だから
夫が配偶者控除を受けられるかどうかは、妻の合計所得金額が62万円以下か(給与だけなら給与収入136万円以下か)で決まります(2026年分から)。国税庁は合計所得金額の計算例を、こう示しています。
(例)給与収入90万円、不動産所得10万円の場合
国税庁 タックスアンサー No.1190 より
給与所得=給与収入-給与所得控除=90万円-74万円=16万円
合計所得金額=給与所得の金額+不動産所得の金額=16万円+10万円=26万円
足しているのは所得だけで、控除は1つも引いていません。iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除なので、この計算には入ってきません。つまり、iDeCoを始めても合計所得金額は1円も下がらず、配偶者控除の判定も変わりません。
「iDeCoに入れば壁を超えて働ける」は誤りです。社会保険の130万円は賃金で、配偶者控除は合計所得金額で判定します。どちらもiDeCoの掛金を差し引いた後の数字ではありません。壁の内側で働くつもりなら、働く時間の設計とiDeCoは切り離して考えてください。
そもそも妻はいくらまで働くのが得なのか、という話はこちらで手取りベースで試算しています。
👉 【2026年10月予定】106万円の壁が撤廃へ|パート妻が損しない年収を年収500万円台パパが手取りで試算
👉 最低賃金は2026年10月から順次1,176円へ|パート年収はいくら増える?扶養内なら月4.5時間減る計算
妻の年収別・iDeCoで戻る所得税はいくら?(早見表)
掛金は、扶養内の妻(第3号被保険者)の上限である月2万3,000円(年27万6,000円)にそろえて、妻の年収別に所得税を計算しました。左の列が今の所得税、右の列がiDeCoで戻る額です。
なお、年収130万円以上で勤め先の厚生年金に入る妻は第2号被保険者になり、掛金の上限は勤め先の企業年金の有無で変わります(企業年金のない会社員は2026年12月から月6万2,000円)。上限の変わり方は iDeCoの上限が月6.2万円に の記事にまとめました。
| 妻の年収 | 今の所得税 | iDeCoで戻る額 |
|---|---|---|
| 100万円(扶養内) | 0円 | 0円 |
| 129万円(扶養内) | 0円 | 0円 |
| 160万円 | 0円 | 0円 |
| 180万円 | 0円 | 0円 |
| 200万円 | 0円 | 0円 |
| 220万円 | 4,500円 | 4,500円 |
| 250万円 | 12,750円 | 12,750円 |
| 300万円 | 26,500円 | 13,800円 |
戻る額が掛金に比例して増えないのは、もともと払っている所得税が上限だからです。年収220万円の行が4,500円、250万円の行が1万2,750円で止まっているのは、その人の所得税がもともとその額しかないためです。
年収300万円の行で初めて、戻る額が掛金いっぱいの1万3,800円に届きます。27万6,000円 × 5% = 1万3,800円。これが掛金月2万3,000円・税率5%のときに戻る額です。
- 住民税。住民税の基礎控除は43万円のままなので、所得税が0円でも住民税はかかっていることがあります(扶養内でも年収120万円前後から)。その場合、iDeCoで住民税の所得割は減ります(たとえば年収129万円なら年9,500円前後。均等割は残ります)。非課税になる基準はお住まいの地域で違うので、住民税の通知書か市区町村の窓口で確認してください
- 復興特別所得税(所得税額の2.1%)と、1,000円未満の端数処理
- 雇用保険料、生命保険料控除など基礎控除・社会保険料控除以外の控除
- 年収200万円以上の行は2026年分と2027年分の基礎控除104万円・給与所得控除(220万円までは74万円)で計算しています。2028年分(令和10年分)以後は基礎控除の表が変わる予定なので、そのときは計算し直しが必要です
それでも入る価値はある?手数料とNISAとの使い分け
節税が0円でも、iDeCoには「運用で増えた分に税金がかからない」という別の利点が残ります。ただし、そこだけを取り出すと、比較する相手はNISAになります。
そして忘れがちなのが手数料です。国民年金基金連合会の手数料だけでも、加入時に2,829円(税込・初回のみ)、掛金を納めるたびに105円(税込)がかかります。毎月納めれば年1,260円。これとは別に、口座を作った金融機関の管理料がかかります。
2,829円 + 105円 × 12か月 × 10年 = 1万5,429円
節税が0円のままなら、この分は戻ってこない支出になります。
もうひとつ、iDeCoは原則として60歳になるまで引き出せません。これはiDeCo公式サイトが「ご注意いただきたいこと」の1つ目に挙げている点です。子どもの進学でお金が要る時期と、60歳が重なるとはかぎりません。
いま効く人:妻が所得税を払っている(目安は年収210万円超)。老後まで動かさないお金として置ける。所得税が0円でも住民税を払っていれば、住民税は減ります。
いま効かない人:扶養内で、年収120万円前後に届いていない(所得税も住民税の所得割も0円)。教育費など、60歳より前に使う可能性のあるお金である。

迷ったときの順番は、次の3つで整理できます。
NISAで積み立てるといくらになるのか、金額のイメージがない方はこちらから確かめてみてください。
まとめ:0円からは引けない、を先に確かめる
- 扶養内(年収130万円未満)で働く妻は所得税が0円なので、iDeCoの掛金を年27万6,000円入れても戻る所得税は0円
- 2026年は給与所得控除74万円+基礎控除104万円=年収178万円まで所得税がかからない(2026年分と2027年分)。130万円はその内側
- 妻の掛金を夫の所得から引くことはできない(iDeCo公式サイトが明記)
- iDeCoに入っても106万円・130万円の壁も配偶者控除の判定も動かない。壁は賃金と合計所得金額で見るため
- 所得税が戻り始めるのは年収210万円あたりから。年収300万円で年1万3,800円(掛金月2万3,000円・税率5%のとき)
- 住民税は基礎控除が43万円のままなので、扶養内でも年収120万円前後から所得割がかかり、その分はiDeCoで減る
- 節税0円のあいだも手数料はかかる(連合会分だけで10年1万5,429円)。60歳まで引き出せない点も含め、まずはNISAと比べる
確かめる場所は、妻の源泉徴収票の「源泉徴収税額」と、住民税の通知書の「所得割」の2か所です。どちらも0円なら、iDeCoで減る税金はありません。制度の説明を読み込む前に、まず紙を2枚見るのが早いと思います。
妻の働き方そのものを見直すなら、年金がいくら増えるかまで含めて考えると判断が変わります。あわせて読んでみてください。
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👉 【2026年10月予定】106万円の壁撤廃でパートの年金は月いくら増える?年収500万円台パパが妻の年収別に試算
👉 【2026年12月】iDeCoの上限が月6.2万円に|年収500万円台パパが節税額と新NISAとの優先順位を試算
この記事は制度と公表資料をもとにした一般的な情報です。個別の税額・社会保険の判定・投資判断を保証するものではありません。ご自身の状況は、税務署・市区町村・年金事務所・勤務先にご確認ください。
執筆:papakakei.com 編集部|年収500万円台・子育て中の40代パパ
