副業を始めて、家賃やスマホ代の一部を経費にする「家事按分(かじあんぶん)」を知ると、次に迷うのが家計簿です。家賃の1割を経費にしたら、家計簿の家賃も減らすのか。帳簿と家計簿の数字がずれるのは間違いなのか。
この記事では、国税庁の案内をもとに、家事按分で変わるお金と変わらないお金を、会社員の副業モデルで試算しました。口座の分け方の手順もまとめています。
- 家事按分をしても、家計簿の家賃は8万円のまま。口座から出ていくお金は1円も減らない
- 家賃・スマホ・ネットの一部を経費にすると、モデルでは年12万8,400円が経費になる
- それで下がる税金は年約1万9,400円(月約1,600円)。所得税5%・住民税10%の場合
- 家事按分すると、家計簿と帳簿にそれぞれいくらで付けるか
- 家事按分で税金はいくら下がるか(税率5%と10%の2パターン)
- 按分の割合の決め方と、残しておく根拠のメモ
- 副業の口座と家計の口座の分け方の手順
副業のお金は「稼いだ半分を家族の口座へ」と決めておくと続きやすい、という話を前に書きました。ただ、家賃の一部を経費にし始めると、どの数字を家族に見せればいいのか分かりにくくなるんですよね。今回はそこを整理します。
家事按分とは?家計簿の家賃は8万円のまま変わらない
先に結論です。家事按分は「税金の計算の上で、経費に入れる分を決める作業」で、家計のお金の流れは変えません。家賃8万円の1割を経費にしても、毎月口座から引き落とされるのは8万円のままです。
国税庁は、家賃や水道光熱費のように暮らしと仕事の両方にかかわる支出を「家事関連費」と呼んでいます。このうち経費にできるのは、取引の記録などをもとに、仕事に直接必要だったとはっきり分けられる部分だけです。
このルールは事業所得だけでなく、会社員の副業で多い雑所得にも当てはまります。副業ライターやハンドメイド販売でも、考え方は同じです。
| 費目 | 家計簿に付ける額 | 帳簿(経費)に付ける額 |
|---|---|---|
| 家賃 | 月8万円 | 月8,000円(1割) |
| スマホ代 | 月4,000円 | 月1,200円(3割) |
| ネット代 | 月5,000円 | 月1,500円(3割) |
| 合計 | 月8万9,000円 | 月1万700円(年12万8,400円) |
家計簿と帳簿で数字が違うのは、間違いではなく、目的が違うからです。家計簿は「いくら出ていったか」、帳簿は「いくらを仕事の費用として数えるか」を記録しています。
家計簿の家賃を7万2,000円に書き換えると、家計が実際より8,000円ぶん楽に見えてしまいます。家族と共有している家計簿なら、なおさら全額のまま付けておきたいところです。

家事按分で税金はいくら下がる?年12万8,400円の経費で約1万9,400円
按分で変わるのは、基本的に税金だけです。経費が増えると副業の所得(売上−経費)が減り、そのぶん所得税と住民税が下がります。
| 按分した経費(年) | 12万8,400円 |
| 所得税(5%+復興特別所得税) | 約6,550円 |
| 住民税(10%) | 約1万2,840円 |
→ 下がる税金は合わせて 年約1万9,400円。月にすると約1,600円です。
※副業の所得を足しても所得税の税率の区分が変わらない前提のモデルです。
| 所得税の税率 | 経費12万8,400円で下がる税金(年) |
|---|---|
| 5%の人 | 約1万9,400円 |
| 10%の人 | 約2万6,000円 |
自分の所得税の税率は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた額で見当がつきます。この額に副業の所得を足して、195万円未満なら5%、195万円以上330万円未満なら10%です(国税庁の速算表)。
家賃8万円と比べると、戻ってくるのは月1,600円ほどです。按分は「家賃が安くなる仕組み」ではありません。税金が少し軽くなるだけなので、家計簿の固定費はそのまま見ておく必要があります。

家事按分の割合はどう決める?「◯割まで」より根拠のメモが大事
按分の割合に「家賃は◯割まで」という決まった数字は、国税庁の案内にはありません。求められているのは、仕事に使った部分を記録などではっきり分けられることです。
よく使われる物差しは、家賃なら「仕事に使っている床面積」、スマホやネットなら「仕事に使っている時間」です。どちらにするにしても、あとで聞かれたときに説明できる形で残しておくのがポイントです。
- 家賃:間取り図に仕事で使う机のまわりを書き込み、全体の床面積に対する割合を計算しておく
- スマホ・ネット:ふつうの1週間で、仕事に使った時間と全体の時間をメモしておく
- 共通:家賃の契約書・スマホやネットの明細を、経費にした年の分まとめて保存する
按分の割合は、一度決めたら毎月同じ割合で付けるほうが家計簿とも合わせやすくなります。使い方が大きく変わった年だけ、メモを取り直せば十分です。
- 親など生計を一にする家族に払う家賃は、経費になりません(国税庁)
- 持ち家の人は家賃がないので按分の対象が変わります。住宅ローン控除には「床面積の2分の1以上を自分の住まいに使う」という要件もあるので、仕事に使う部分を経費にする前に税務署で確認を
副業の口座はどう分ける?家計簿に付けるのは「家計に入れた額」
家計簿と帳簿を混ぜないいちばんの方法は、副業のお金が出入りする口座を1つ決めることです。手順は次の4つです。
- ① 副業の売上が入る口座を1つ決める(家計の口座とは別にする)
- ② 家賃・スマホ・ネットの引き落としは、家計の口座のままにする
- ③ 副業の口座に、副業ぶんの税金を残しておく
- ④ 残りから家計に入れる額を決めて振り替え、家計簿にはその振替額を収入として付ける
②で引き落としを家計の口座に残すのは、家計簿の固定費を全額のまま見せるためです。家賃の引き落とし先を按分のために分けると、家計簿にも帳簿にも半端な数字が出てきて、かえって分かりにくくなります。
③の税金は、モデルなら年約3万5,000円(月約2,900円)です。按分しなかった場合の約5万4,400円より約1万9,400円少なくなります。この額を毎月残しておけば、翌年の確定申告や住民税の請求で慌てずに済みます。
家計に入れる額をどう決めるかは家庭しだいです。副業の時間の作り方や家族との約束ごとは、育児の隙間時間で副業月3万円でまとめています。育休中に副業をする場合は、給付金との関係を育休中に副業したら給付金は減る?で確かめてください。
家族に見せるのは「家計に入れた額」だけ、と決めておくとすっきりします。経費や按分の細かい話は帳簿の中で済ませればいいので、家計の話し合いに税金の計算を持ち込まずに済みます。
まとめ:家計簿は「出たお金」、帳簿は「経費にする分」で付ける
- 家事按分をしても家計簿の家賃は全額のまま。帳簿と数字が違うのは正しい状態
- モデルでは経費が年12万8,400円、下がる税金は年約1万9,400円(税率10%なら約2万6,000円)
- 按分の割合に決まった上限はない。面積や時間など説明できる根拠を残す
- 「20万円以下なら申告不要」は所得の話で、住民税の申告は別に必要
- 副業の口座を分け、税金のぶんを残してから、家計に入れた額を家計簿に付ける
家事按分は、副業を続けるうえで知っておいて損のない仕組みです。ただ、家計を楽にしてくれるのは月1,600円ほど。家計簿は今までどおり「出ていったお金」で付けて、副業のお金は口座ごと分けておく。それだけで、確定申告の前に慌てずに済みます。
出典:国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識/No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人/No.2260 所得税の税率/No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(いずれも令和8年4月1日現在法令等)/神戸市「住民税(市県民税)の申告(個人)」/芦屋市「給与所得以外の所得が20万円以下の場合、住民税の申告は必要ですか」。売上・家賃・通信費・按分の割合・税率はモデルです。数字は2026年10月時点で確認したもので、制度が変わったら更新します。個別の申告内容は税務署・お住まいの市区町村にご確認ください。
執筆:papakakei.com 編集部
