生命保険の死亡保障、いくらにしていますか。「月◯円なら払えるから」「営業の人にすすめられた額だから」で決めていると、多すぎる保険料を払い続けるか、いざというときに足りないかのどちらかになりがちです。
必要な額は、家族に必要なお金から「遺族年金・配偶者の収入・貯金」を引いた不足額で決まります。年収500万円台・子ども2人のわが家の支出で、実際に計算してみました。
- 会社員・年収500万円・持ち家(団信あり)・妻パート・子ども2人のモデルで、不足額は約77万円
- 遺族年金だけで18年間に約2,940万円。これを引かずに保険を決めると過大になりやすい
- ただし賃貸なら約1,590万円、妻が専業主婦なら約1,880万円。賃貸で専業主婦なら約3,390万円で、同じ年収でも家庭の条件で40倍以上変わる
- 生命保険の必要額を「不足額」から逆算する4つのステップ
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金は実際いくら出るのか(2026年度の額)
- 賃貸・専業主婦・私立大学など、条件で不足額がどう変わるか
- 自分の家の不足額を出すときに、どの書類を見ればいいか
子どもが生まれた直後、不安にあおられて夫婦で5本も保険に入っていました。中身を整理したら、必要だったのは収入保障保険1本だけ。最初に「いくら足りないのか」を計算していれば、遠回りせずに済んだと思います。
生命保険はいくら必要?「払える額」ではなく「不足額」で決める
結論から言うと、死亡保障の額は「必要なお金 − 入ってくるお金 − 貯金」で決まります。保険はこの残りを埋める道具です。
生命保険文化センターも、遺族の支出見込みから収入見込みを差し引いた不足分を「必要保障額」とする考え方を紹介しています。順番は次の4ステップです。
「月1万円なら払えるから、その範囲で入れる保障を」と逆から考えると、②③を引く前の大きな数字に保険をかけてしまいます。計算した結果、保険がほとんど要らない家庭も出てきます。
ここからは、次のモデル家庭で計算します。支出はわが家の家計簿、年齢と妻の収入は計算用の仮置きです。
| 項目 | モデルの前提 |
|---|---|
| 夫 | 40歳・会社員・年収500万円(厚生年金に加入) |
| 妻 | 38歳・パート(手取り年100万円) |
| 子ども | 7歳(小2)と4歳(年中) |
| 住まい | 持ち家・住宅ローンに団信あり |
| 貯金 | 300万円(保障に回せる分) |
| 計算する期間 | いま万一があった場合/下の子が大学を出るまでの18年 |

遺された家族に必要なお金はいくら?生活費と教育費で約5,400万円
18年間に必要なお金を積み上げると、合計は約5,415万円になりました。大きいのは生活費と教育費の2つです。
| 必要なお金(18年分) | 金額 |
|---|---|
| 生活費(今の7割) | 約3,689万円 |
| 教育費(2人・国公立) | 約1,607万円 |
| 葬儀費用 | 約119万円 |
| 住宅ローン | 0円(団信で完済) |
| 合計 | 約5,415万円 |
生活費:今の支出の7割で見る
わが家の支出は月およそ32万円です(家計をほぼ全部公開した記事)。ここから、別に計算する住宅ローン(約4.9万円)・教育費(約1.6万円)・保険(約1.1万円)を除くと月24.4万円。
夫がいなくなると食費などが減るので、子どもが独立するまでは今の7割で見るのが一般的な目安です(生命保険文化センターの計算方法)。月24.4万円×0.7=月17万800円、18年で約3,689万円です。
教育費:2人で約1,607万円(全部国公立の場合)
文部科学省「子供の学習費調査(令和5年度)」の公立の平均と、国立大学の標準額(入学金28万2,000円・授業料年53万5,800円)で出しました。塾や習い事などの学校外の費用も含んだ数字です。
| 子ども | これから必要な教育費 |
|---|---|
| 上の子(7歳・小2) | 小学校の残り5年 約183万円+中学 約163万円+高校 約178万円+大学 約243万円=約767万円 |
| 下の子(4歳・年中) | 幼稚園2年 約37万円+小学校 約220万円+中学 約163万円+高校 約178万円+大学 約243万円=約840万円 |
葬儀費用は、鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」の平均118.5万円を使いました。住宅ローンは、団体信用生命保険(団信)に入っていれば死亡時に残高がゼロになるので0円です。
遺族年金はいくら出る?会社員の夫なら18年で約2,940万円
会社員が亡くなると、子どものいる妻には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つが出ます。下の子が18歳を過ぎた後は、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が付きます。18年間の合計は約2,938万円でした。
- 遺族基礎年金:年84万7,300円+子の加算(1人目・2人目は各24万3,800円)。子が18歳になった年度の3月末まで
- 遺族厚生年金:夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3。在職中に亡くなった場合は、加入が300か月未満でも300か月として計算
遺族基礎年金は、子ども2人が対象の11年間は年133万4,900円。上の子が18歳の年度末を過ぎた後の3年間は年109万1,100円です。下の子も18歳を過ぎると終わります。合計で約1,796万円です。
遺族厚生年金は、夫の働いていた期間の平均の月収(ボーナス込み)を40万円と置くと、40万円×5.481/1000×300か月×3/4=年49万3,290円。18年で約888万円です。
さらに、下の子が18歳の年度末を過ぎて遺族基礎年金が止まるとき、妻は52歳です。
40歳の時点で子がいて遺族基礎年金を受けていた妻には、65歳になるまで遺族厚生年金に中高齢寡婦加算(年63万5,500円)が付きます。試算の18年間では最後の4年分で約254万円です。
| 入ってくるお金(18年分) | 金額 |
|---|---|
| 遺族基礎年金(子の加算込み) | 約1,796万円 |
| 遺族厚生年金 | 約888万円 |
| 中高齢寡婦加算(妻52歳からの4年分) | 約254万円 |
| 妻のパート収入(手取り年100万円) | 1,800万円 |
| 児童手当(高校生年代まで月1万円×2人) | 300万円 |
| 合計 | 約5,038万円 |
計算してみていちばん意外だったのがここです。遺族年金だけで18年に約2,940万円。毎月の給料から引かれている厚生年金の保険料は、老後のためだけのものではないんですね。

死亡保障の不足額はいくら?貯金を引くと約77万円
必要なお金から入ってくるお金と貯金を引くと、不足額は約77万円でした。
| 必要なお金(18年分) | 約5,415万円 |
| − 遺族年金・妻の収入・児童手当 | 約5,038万円 |
| − 貯金 | 300万円 |
→ 保険で埋める額は 約77万円 です。
ただ、この数字はモデル家庭のものです。条件を1つ変えるだけで、不足額は大きく動きます。
| 条件を変えると | 不足額 |
|---|---|
| モデル(持ち家・団信あり・妻パート) | 約77万円 |
| 2人とも私立大学(平均) | 約580万円 |
| 賃貸で家賃月7万円 | 約1,590万円 |
| 妻が専業主婦(収入0) | 約1,880万円 |
| 賃貸+妻が専業主婦 | 約3,390万円 |
賃貸だと家賃は団信のように消えないので、18年で1,512万円がそのまま上乗せになります。妻の収入が0なら、パート分の1,800万円がまるごと不足に変わります。
反対に、妻が正社員で手取り年300万円あれば18年で3,600万円入るので、不足額はマイナス=死亡保障の保険がなくても足りる計算です。
なお、モデルの妻の収入(手取り年100万円)は計算用の仮置きです。妻が働けなくなる・収入が減る可能性まで見込むなら、不足額は専業主婦の行に近づきます。
同じ年収500万円でも、77万円の家もあれば3,390万円の家もある。「年収◯万円なら保険金◯千万円」という目安をそのまま使えない理由が、表にしてよく分かりました。
- 勤め先の死亡退職金・弔慰金:あれば不足額が減ります。就業規則や福利厚生の案内で確認を
- 下の子が独立した後の妻の生活費:妻が働き続け、65歳からは自分の年金で暮らす前提です。専業主婦の家庭はこの期間も足してください
- 大学の一人暮らし費用・持ち家の固定資産税や修繕費:該当するなら上乗せが必要です
自分の家の不足額を出す手順は?見る書類は4つ
自分の家で計算するときは、次の4つの書類をそろえれば数字が埋まります。
- 家計簿(3か月分):住居費・教育費・保険料を除いた月の生活費を出して、7割をかける
- ねんきん定期便:厚生年金の加入月数と、これまでの報酬額の記録を確認
- 住宅ローンの契約書:団信に入っているか、保障の範囲はどこまでか
- いま入っている保険の証券:死亡保険金の額と、保障がいつまで続くか
もう1つ大事なのは、不足額は年々小さくなることです。1年たてば、残りの生活費も教育費も1年分減ります。子どもが小さいときほど大きく、独立に近づくほど小さくなります。
この形に合うのが、受け取る総額が年々減っていく収入保障保険です。一方で、不足額がモデルのように100万円に届かない程度なら、保険に入らずに貯金を厚くして埋めるのも選択肢になります。
保険料が浮いたら、その分をほかの固定費の見直しと合わせて考えると効果が大きくなります。わが家が保険を含めて手放した固定費はこちらにまとめています。
まとめ:保険の額は「不足額」を出してから決める
- 必要な死亡保障=必要なお金 − 遺族年金などの収入 − 貯金
- 年収500万円・持ち家(団信)・妻パート・子2人のモデルで不足額は約77万円
- 遺族年金は18年で約2,940万円(中高齢寡婦加算を含む)。引き忘れると保険が過大になる
- 賃貸・専業主婦・私立大学で不足額は数百万〜3,000万円台まで増える
- 不足額は年々減るので、ライフイベントのたびに計算し直す
保険は「安心を買うもの」と言われますが、安心の大きさは数字で出せます。まずは家計簿とねんきん定期便を並べて、わが家の不足額を1回出してみてください。入りすぎていた保険料が見つかれば、それはそのまま子どものための積立に回せるお金です。
出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」「中高齢寡婦加算」/厚生労働省「年金制度改正法の概要」/生命保険文化センター「万一の際に必要な保障額の算出方法と具体例」/文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2026年1月訂正版)「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果」「国立大学と私立大学の授業料等の推移」/鎌倉新書「第6回お葬式に関する全国調査(2024年)」/こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
※金額は2026年9月時点。制度や統計が更新されたら数字を見直します。保険の加入・解約は、ご自身の契約内容を確認したうえで判断してください。
執筆:papakakei.com 編集部
