「金利が上がったらしい」というニュースを見て、通帳の残高を眺めて、そのまま何もしなかった。
よくある話だと思います。
減っていないのだから、とりあえず安心。
ところが数字を並べてみると、残高が減っていないだけで、買える量はきっちり減っていました。
- 普通預金の平均金利は年0.322%(2026年9月・日本銀行)。1年前の0.183%から確かに上がりました
- でも物価は前年同月比+1.9%(2026年8月・総務省)。金利より物価のほうが6倍速い
- 100万円を10年置くと、通帳は約102万6,000円。ただし物価が今のペースで続くと、買える量は約85万円ぶんまで落ちます
- 差は約15万円。1円も減っていないのに、それだけ買い物ができなくなる計算です
- 貯金50万〜500万円を5年・10年置いたとき、実質でいくらまで目減りするかの早見表
- 普通預金の金利が上がったのに、それでも追いつかない理由
- 日本の家計の預金比率は44.9%。この1年で増えたのは預金ではなかったという事実
- 元本を減らさずに置き場所だけ変える選択肢(個人向け国債 変動10年の実際の利率)
- 預金にいくら残せばいいか。「使う時期」で3つに分ける考え方
正直に言うと、金利が上がったニュースを見て、ちょっと安心していました。電卓を叩くまで、物価のほうがずっと速いことに気づいていませんでした。
貯金100万円は10年でいくら目減りする?
先に計算の前提をそろえます。ここは全部、公的な数字だけを使います。
この前提で、置きっぱなしにした金額ごとに計算するとこうなります。
「名目」は通帳に印字される数字、「実質」はそのお金で買える量を今の物価に換算した数字です。
| 置いた額 | 10年後の通帳(名目) | 10年後に買える量(実質) | 目減り |
|---|---|---|---|
| 50万円 | 512,978円 | 424,969円 | ▲75,031円 |
| 100万円 | 1,025,957円 | 849,938円 | ▲150,062円 |
| 200万円 | 2,051,914円 | 1,699,876円 | ▲300,124円 |
| 300万円 | 3,077,871円 | 2,549,814円 | ▲450,186円 |
| 500万円 | 5,129,784円 | 4,249,690円 | ▲750,310円 |
100万円を10年置くと、利息は約2万6,000円つきます。
その間に物価は約20.7%上がるので、利息を足しても、買える量は約15万円ぶん減ります。
10年は長い、と感じるかもしれません。5年でも見てみます。100万円なら通帳は101万2,895円、買える量は約92万2,000円ぶん。5年で約7万8,000円です。子どもが小学校に入ってから卒業するまで、と考えると、そんなに遠い話ではありません。

物価が1.9%で続かなかったら?
物価が今のペースで10年続くとは限りません。そこで、100万円を10年置いた場合の「買える量」を、物価のシナリオ別に並べておきます。
| 物価の上がり方 | 10年間の物価上昇 | 10年後に買える量 |
|---|---|---|
| 年1.0% | +10.5% | 928,785円(▲71,215円) |
| 年1.5% | +16.1% | 884,033円(▲115,967円) |
| 年1.9%(いまのペース) | +20.7% | 849,938円(▲150,062円) |
| 年2.0% | +21.9% | 841,642円(▲158,358円) |
| 年2.5% | +28.0% | 801,476円(▲198,524円) |
物価が半分の年1.0%まで落ち着いたとしても、10年で7万円台の目減りは残ります。
「物価が落ち着けば元に戻る」という話ではない、というのがこの表のいちばん大事なところです。
預金金利は0.322%まで上がったのに、なぜ追いつかない?
金利は本当に上がっています。日本銀行の統計で、普通預金の平均金利はこう動きました。
| 時期 | 普通預金の平均金利 | 100万円の年間利息(税引後) |
|---|---|---|
| 2025年9月 | 年0.183% | 1,458円 |
| 2026年8月 | 年0.306% | 2,438円 |
| 2026年9月 | 年0.322% | 2,566円 |
背景にあるのは政策金利の引き上げです。日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導水準を1.0%程度に引き上げることを決めました(賛成7・反対1)。この6月の利上げの影響が、少し遅れて預金金利に届いてきた形です。
さらに2026年9月18日の会合で1.25%程度へ引き上げています(賛成7・反対2)。上の9月の預金金利はこの利上げより前の数字です。9月の利上げ分は、これから預金金利に反映されます。
1年で利息は1,458円から2,566円へ、1,108円増えました。うれしいことです。
ただ、同じ100万円ぶんの買い物は、物価1.9%なら1年で1万9,000円ぶん高くなっています。増えた利息1,108円に対して、負担は1万9,000円。ここが埋まらないのが今の状況です。
金利が上がったニュースは「預金でも大丈夫」の合図ではなく、物価が上がっているから金利も上げているという合図です。物価が先、金利が後という順番です。
日本銀行が2026年9月18日にもう一段の利上げ(1.25%程度へ)を決めたことを受けて、三菱UFJ銀行は円普通預金の金利を0.40%から0.50%へ引き上げると同じ日に発表しました。改定日は2026年11月2日です。
では0.5%なら物価に追いつくのか、を先に計算しておきます。100万円を10年置いた場合、通帳は約104万1,000円。物価1.9%が続けば買える量は約86万2,000円ぶんで、目減りは約13万8,000円です。
金利が0.322%から0.5%へ上がっても、10年の目減りは15万円から13万8,000円に縮むだけ。方向は正しいのですが、追いつく水準ではありません。この記事の結論は、金利が0.5%になっても変わりません。
「減っていないから安心」という感覚が、いちばん危なかったです。減り方が通帳に出てこないので、気づく機会そのものがありませんでした。
日本の家計は、いまも44.9%が預金のまま
これはわが家だけの話ではありません。日本銀行の資金循環統計によると、2026年6月末の家計の金融資産は2,519兆円。その内訳がこちらです。
| 種類 | 残高 | 構成比 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 現金・預金 | 1,132兆円 | 44.9% | +0.5% |
| 保険・年金・定型保証 | 586兆円 | 23.3% | +3.2% |
| 株式等 | 486兆円 | 19.3% | +47.0% |
| 投資信託 | 193兆円 | 7.7% | +36.8% |
とはいえ、まだ44.9%は預金です。置きっぱなしにしているのは、まったく珍しいことではありません。問題は「珍しくないから大丈夫」と考えてしまうことのほうです。
👉 変動金利が上がると住宅ローンの返済はいくら増える?2027年1月から効いてくる額を試算
同じ「金利が上がる」という話でも、借りている側には逆向きに効きます。住宅ローンがあるご家庭は、預ける話より先にこちらを確認したほうが金額は大きいです。
元本を減らさずに置き場所を変える方法は?
「じゃあ投資しかないのか」と身構える必要はありません。
元本が減らない置き場所のなかにも、普通預金よりずっと利率の高いものがあります。個人向け国債の「変動10年」です。
直近の第198回(9月募集・すでに締め切り)の条件を、財務省の発表から拾います。
| 項目 | 普通預金 | 個人向け国債 変動10年(直近の第198回・参考) |
|---|---|---|
| 利率(税引前) | 年0.322% | 年1.95% |
| 利率(税引後) | 年0.25659% | 年1.5538575% |
| 100万円を半年置いた利息 | 約1,283円 | 約7,769円 |
| 元本 | 減らない | 減らない(額面100円につき100円) |
| 引き出し | いつでも | 発行から1年経てばいつでも |
同じ100万円を半年置くだけで、差は約6,486円。
300万円なら半年で約2万3,308円と約3,849円の差になります。元本が減らないという条件は同じまま、この差が出ます。

- 1.95%が10年続くわけではない。変動10年は半年ごとに利率が変わります。基準金利×0.66で決まる仕組みなので、金利が下がれば受け取る利子も減ります(最低でも年0.05%は保証)
- 1年間は引き出せない。発行から1年たつまでは、原則として中途換金できません(災害や本人が亡くなった場合の特例はあります)
- 途中でやめると直前2回分の利子が引かれる。中途換金するときは「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」が差し引かれます。元本そのものは100円につき100円のままですが、直近1年ぶんの利子は消えると考えておくと安全です
- 毎月募集されていて、利率は毎回変わる。第198回の募集は9月30日で終わりました。次の第199回は2026年10月8日から10月30日までの募集で、利率は10月7日に発表されます。表の1.95%は目安と考えて、申し込む前に最新の利率を確認してください
国債と聞いて、何十万円単位で買うものだと思い込んでいました。1万円から1万円単位で買えると知って、勝手にハードルを上げていただけだと分かりました。
もちろん、国債でも物価1.9%を確実に上回るとは限りません。
それでも年0.322%と年1.95%では、追いつけなさの度合いがまるで違います。「増やす」ではなく「減り方をゆるめる」ための選択肢として、知っておく価値はあります。
預金にいくら残せばいい?「使う時期」で3つに分ける
ここまで読んで「全部動かさないと損だ」と思ったなら、いったん止まってください。
生活のためのお金を動かすのが、いちばんやってはいけないことです。
分ける基準は金額ではなく使う時期です。子育て中の家庭なら、この3つで足ります。
- ①1年以内に使う・使うかもしれないお金(生活費、急な入院や修理、車検、入学の支度金)
→ 普通預金のままが正解。目減りは受け入れるコストです。すぐ引き出せることのほうが価値があります - ②1〜5年で使う予定があるお金(数年後の車の買い替え、リフォーム、進学の頭金)
→ 値動きで減っては困るので元本が減らない置き場所。個人向け国債の変動10年や、期間を区切った定期預金が候補になります - ③10年以上使う予定がないお金(下の子の大学費用、老後資金)
→ ここではじめてNISAでの積み立てが選択肢に入ります。時間をかけられるお金だけを回します
そして、③に回す前に効くのが固定費の見直しです。年1.9%の物価上昇に対して、通信費や保険を月3,000円下げれば年3万6,000円。これは100万円を預金に置いて得られる利息の約14倍の金額で、しかも確実に手元に残ります。
「全部動かさなくていい」と分かってから、やっと手が動きました。動かす前に、まず①をいくら残すかを決める。順番はそれだけです。
まとめ:通帳の数字は減らない。減るのは買える量
- 普通預金の平均金利は年0.322%まで上がった(2026年9月・日本銀行)。1年前の0.183%からは確かに前進
- ただし物価は前年同月比+1.9%(2026年8月・総務省)。100万円の利息は年2,566円、物価による負担増は年1万9,000円ぶん
- 100万円を10年置くと、通帳は約102万6,000円。買える量は約85万円ぶんで、差は約15万円
- 日本の家計の44.9%はいまも現金・預金。ただし1年で増えたのは投資信託(+36.8%)と株式等(+47.0%)のほう
- 元本を減らさずに置き場所を変えるなら個人向け国債 変動10年(直近の第198回は年1.95%・1万円から。次回の利率は10月7日発表)。ただし利率は半年ごとに変わり、1年は引き出せない
- 動かす前に使う時期で3つに分ける。1年以内に使うお金は普通預金のままでいい
目減りは、通帳を見ても気づけません。
だからこそ、年に一度でいいので「この口座のお金は、いつ使う予定か」を書き出してみるだけで十分です。そこで①②③に分けられたら、あとは置き場所を変えるだけの作業になります。
※本記事の試算は公表統計をもとにした概算です。将来の金利・物価を保証するものではなく、個別の投資判断を推奨するものでもありません。数値は2026年10月4日時点で確認した最新の公表値です。
執筆:papakakei.com 編集部
